同人誌印刷会社の売上規模の話

 AI生成界隈は元は何かしらの創作をしていた人も多く、同人誌の存在を知ってる人も多い気がします。また、そうでなくても、自分の作品のIP化が進み、何かしらのグッズ、資料を作ろうとした時に印刷という話は切っても切れない関係です。そういう意味では当研究所は印刷業界について詳しいほうなので、ある程度情報は共有できます。

 同人誌の印刷の話に絞ると、基本的にはオフセット印刷を指すことが多いです。機械の進化に伴い、オンデマンド印刷も増えましたが、同人誌を印刷会社で作る=オフセット印刷で出すという感覚の人もまだまだいてます。なのでここでは「オフセットの同人誌印刷」についてフォーカスしてると考えてお読みください。

 印刷というのは基本的にはC(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)K(ブラック)の4色の掛け合わせで印刷されます。なので、表紙を印刷するオフセット印刷機は4色以上の胴数を持っている事が多いと思って差し支えありません。(理論上2色機を2回通しとかも可能ですし、実際にそういう印刷会社もいてますが…)逆に、同人誌の場合は本文は両面1色になるので、それをわざわざ4色機で印刷する必要はなく、単色機または1C/1Cの両面機等を通すのが一般的です。

 同人誌は要は個人規模の出版ですから、部数が少ない事が一般的で100~500部がボリュームゾーンです。これはいわゆる商業印刷と比べるとかなり少なく、通し枚数が1000~1万、10万の世界から見ると米粒みたいな規模という認識で、商業印刷の人からすると「同人誌の印刷でどうやって利益出してるんだ?」という風に見られることが多いです。

 同人誌印刷会社を使ったことのある人はご存知かとは思いますが、同人誌印刷は、仕様や締め切りがかなり細かく決まっています。一定のタイミングにそろえることで、複数案件を同じ版面にまとめる、つまり版に相乗りをして効率よく回そうというスタイルです。話は逸れますがプリントパックをはじめ、通販型印刷サイトがこの方式を採用し、個人規模の印刷を根こそぎ取りに行ったのも、“仕様を標準化して大量処理する”というこの考え方に近いものがあります。

 一方、商業印刷ではその都度のタイミングで入稿、下版、印刷、出荷、しかも納期がシビアという世界ですので、案件ごとのスケジュールとコストはバラバラです。そこにきて、昨今の印刷需要縮小の流れで部数が減ってきているので、印刷会社の倒産のニュースも珍しくありません。

 同人誌印刷会社はそういった方法で小ロットでも出来るだけ価格を抑えて回すという事で商売をしてきています。なので一般的な印刷会社とはロットの大きさから仕事の回し方までかなりかけ離れた現場です。そのため動く金額も違ってきます。

 例えば同人誌専門印刷会社は、知名度のわりに売上規模はそこまで巨大ではありません。一般的な商業オフセット印刷会社の方が、売上規模では大きいケースも珍しくありません。そのため、印刷コストの多くを占める紙代が上がると、一気に苦しくなるのです。

 印刷のコストと言えば、まずインキを思い浮かべる人が多いと思います。ですが同人誌印刷はロット自体が小さく、しかも本文は黒1色(墨1色)の場合がほとんどです。さらに、広告チラシのような全面ベタの印刷物と比べると空白部も多いため、実はインキ消費量そのものはそこまで多くありません。むしろ版代の値上がりの方がこたえます。版は部数に関係なく、ページがあればあるほど必要になるからです。ちょうどカルビーがパッケージを白黒にするのがニュースになりましたが、あれこそグラビア印刷で軟包装を毎日何万メートル単位で印刷しているので、インキの消費量の桁が違います。

 印刷と言っても色々な方式がありますし、業界も様々なのでめちゃくちゃややこしいですね。「俺は印刷業界にいたから印刷に詳しいんだぞ」と言っても、ちょっと違う印刷の話は全く分からないことも珍しくありません。そういう意味では、自力でグッズや書籍を作る時は、自分が何を作りたいのかに合わせて情報をうまく拾っていきたいところです。

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